「はぁ……困りましたわね……」 漆黒のサマードレスに身を包んだ少女は、悩んでいた。 そうとだけ聞けば、実に可愛らしく思われるだろう。 だが、その少女の存在は、この現状を見るとあまりに不自然だった。 まずは、今の此処は冬だということ。 次に、ここが そして、彼女のその衣服からは、至るところから鋭利な刃物が生えていたこと。 彼女の名はエリス――「月牙の人形」ウルフエリス=フュージョン。狼の祖たる 「全く……どうしてそういうことになるかしら……」 くどいようだが、彼女は悩んでいた。 その悩みの種というのは、もちろん今回のバトルファイトのことである。 「……どうして、 目の前の現状を思い、彼女は溜息をついた。 「これでは、一人で勝ち上がるのは無理なのでしょうか……。」 また今回も、狼の時代が来ることは無いのか…… はぁ、ともう一度溜息をつくと同時、彼女はある事を思いついた。 「……そうですわ! 一人でダメなら、協力者を探せばいいのですわ! そして、協力するだけ協力してもらって、1対1になったらあとは即刻ポイですわっ!! そうすれば、このバトルファイトの勝者は、わたくしになりますわ……っ!」 狼のネオシスターである彼女がこのようなことを思いつくのは、非常に珍しいことだった。狼ゆえに1体でいることが多く、手を組むことも殆どしなかった……いや、今回が初めてかもしれない。 思い立ったが吉日。彼女は早速協力者を探そうと思案した……が、ある事を失念していた。 「えぇと、今生き残っているのは……わたくし、杏奈ちゃん、若菜ちゃん、いずみちゃん、成慕ちゃん、秋那ちゃん、瑞葵ちゃん、錺ちゃん、久遠ちゃん、聖ちゃん、鏡子ちゃん、湊ちゃん…………そうでしたわ、下級ネオシスターがいないのでしたわ…」 そう、下級ネオシスターは既に姿を消していたのだ。 残るは 「うぅーん……カテゴリーK相手じゃわたくしが倒されてしまいますし、最強のカテゴリーJの聖ちゃんも同じく、多分もう杏奈ちゃんと若菜ちゃんは組んでて手強い、鏡子ちゃんは下手するとわたくしより知恵が回りますし、秋那ちゃんは一度タガが外れるとすごいことになりますし、錺ちゃんは……ちょっと、何をされるか…………となると……」 消去法で残ったのは、海蛇の祖たるネオシスター――「蛇眼の旅妃」サーペントミズキ=アブゾーブだった。 「あの娘なら、 それに、最後の戦闘も陸上戦ならこちらに分がありますわ。所詮は海蛇ですものね。」 彼女の脳内では、着々と戦闘プランが描かれていった。 「……えぇ、これならいけますわ。待っててください、兄さま……わたくしが必ず、勝ってみせますわ……!」 彼女は立ち上がると、咆哮を始めた。 それは紛いもない、狼の雄叫び。 まだ得てもいない希望を得たような笑い。 それを早計と気付かぬ、愚か者の咆哮。 |
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