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突発不定期連載SS:自信家な狼と気ままな海蛇。 Phase.3-海蛇のカプリッツォ(狂想曲)-






彼女は、困惑していた。
先を読んだかのような突然の発言。何れ自分が言おうと思っていた台詞。
完全に、想定外。
「……一体、如何いうつもりかしら?」
やはりこの娘にも何かしら裏があるのだろうか。
そう考え、少し警戒を含んだ口調で言葉を放った。
『もし、向こうも同じ理由だとしたら……わたくしも相当低く見られたものね……』
少女が口を開けるまでの一瞬が、ひどく長く感じられた。

「そんなコワイお顔しないでよぉ……ただ、みずは絵梨朱ちゃんと冒険してみたいだけなの……」
またも想定外。
『……この期に及んで冒険? 何を寝ぼけたことを言っているのでしょう、この娘は……』
本当に素っ頓狂な答えである。
バトルファイトも残り12体、もう終盤へと差し掛かってきたというのにこの台詞。緊張感の無いことこの上ない。
彼女は呆れて言葉を失った。
つい先程までの緊張が無駄になったような、そんな気分で。
「やっぱり、変かなぁ?」
「えぇ、非常に変わっておいでですわね」
蛇の少女の問いかけに心無げに答えて、彼女は逆に一言繰り出した。
「それはそうと、何故わたくしとなのですか? 別に他の子でもいいはずでしょう?」
当然の疑問だった。狼の少女ならば“海蛇ならば落すのは容易い”というように、海蛇にも理由があるはずである。そんなことを言うわけにもいかないけれど。
それに、これで怪しい態度を見せれば、今までの言は嘘であり、ただ単に自分を利用する為だけだとわかる。
そうとわかれば、先手を打って殺すだけ。彼女のスピードがあれば、海蛇の胴元にも容易く喰らい付ける。
とても賢い質問。
『あまり考えずに言いましたけど……中々答え難い質問のはずですわ。 流石、狼の祖たるネオシスター、ですわ♪』
……本人が悦に浸ってなければ、の話だけれど。

だが、海蛇は案外早くこの質問の答えを言った。
「……だって、ほかのみんな……みずと冒険、してくれないんだもん……」
その瞬間、少女の眼から唐突に水分があふれ出した。
白銀の鎧は、跪いて涙を流したのだ。
『全く、まさか泣き出すだなんて……本当に彼女はカテゴリーQなのかしら? 情けないですわ……』
彼女はこの返答に呆れていた。
まさかそんなことの為に自分を?
そう思うと、無性に腹が立ってていた。
「それはそうですわ。バトルファイトの真っ只中で、そんなごっこ遊びに付き合ってくれる者なんて……」
「だってだって、解放されなきゃ冒険も何にも出来ないんだもんっ! それなのに……みんな、みずを笑ったり、攻撃してきたりするんだもん……。みんなといっぱい冒険したいだけなのにぃ……っ」
彼女の言葉を、少女は泣き喚いてかき消した。
『ギャーギャーと五月蝿い……ですわね……』
彼女の怒りはもう頂点であった。
「ねぇっ……絵梨朱ちゃんは、みずといっしょに来てくれる??」
我儘などを言って通じると思っているその心根に、心底腹が立っていた。
彼女はスッと、刃に覆われた右手を掲げた。
「そんなに五月蝿いと……」
引き裂いてあげる、そう言おうとした瞬間だった。
「もう、絵梨朱ちゃんしかいないのっ!」
ピクリ、と彼女の耳が動いた。
「絵梨朱ちゃんにしか……頼めないの」
彼女の鼓動が一拍、大きくなった。
「みんなはダメって言うけど……絵梨朱ちゃんは・・・・・・・、来てくれるよね……?」

もともと彼女は、自己顕示欲の強いネオシスターであった。
頼ってくる者を無下に扱って評判を落すよりは、しっかりと面倒を見ることによって“自分”という存在を周囲に知らしめる方が、何かと得だと知っていた。
だから、このような少女の我儘に似た頼みごとでさえも……
「……それほど言うのでありましたら、付き合って差し上げますわ」
……こうして、つい承諾してしまうのである。
「……え、ホント??」
「ただ、条件としてわたくしにも付き合ってもらいますけどね。それでも良ければ、この手を掴みなさい。ほら」
彼女は引き裂く為に振り上げた右手を、掬うために少女に差し出した。
「……うんっっ!!」
少女はギュッと、右手を掴んだ。離さないように、強く。

こうして、ウルフ海蛇サーペントの冒険が始まった。
『……まぁ、このくらいでカテゴリーQの一人の協力が得られるのだとしたら、チョロいものですわ。冒険にはテキトーに付き合ってあげて、片っ端から他のネオシスター倒しに協力してもらって、後はポイですわ。この様子なら楽勝ですわ♪』
などと、裏で考えつつも。






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あとがき








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