視界は次第に傾いていった。 赤橙に染まったの海蛇は、視界の上方へ、頭から消えていった。 「…………ぁ………はぁっ……………」 ガヂャンッ そして、静寂の空間に黒の少女は倒れ伏した。 何が起きたか、 胸が、疼く。 左手を、胸に当てた。 ヌチャ、と気分の悪い音がたった。 そこには生温かく、滑りをもったモノがあった。 手を離し掌を見詰めると、ぬらぬらと不気味に光る深緑の液体があった。 「いや……ぁ……いや……だ………ぇ……えりす、ちゃ………」 指の隙間から見える赤橙色の白銀は、光を失っていた。 朝日の 「……君はもう御終いだよ、 視界の外からの黒き切り札の声が、一帯に響いた。 冷徹な声の中に、嬉々とした感情を少し混ぜて。 それを耳にすると、狼は急に気分が悪くなった。肺からヒュー、ヒューと乾いた音が鳴っていた。 「えぇ、確かに……… 自分の最期を告げることさえままならない……黒の少女は情けなくて堪らなかった。 あっさりと負けた自分が。 またも 『……何をやっているのかしらね、わたくし。全くなってませんわね……あの子を巻き込んでまで……』 ふと、彼女は少女の様子を見た。少女は俯いたままで、僅かに震えていた。 狼は 「…………ぃんだから……」 海蛇が顔を上げて何かを呟いたのは、その数秒後のことだった。 「……みずは………っ、 その顔は、何かに似ていた。 身体はうち震え、頬を紅潮させ、息は荒く、口角は上がり、眼は怒気と憎悪と悲哀でないまぜになり……狼といたときには決して見せなかった、海蛇の――怒り。 「君に何か出来ると思うのかい……? 此処は それでも、切り札は笑みを浮かべていた。 少女をせせら笑う様に、余裕さえ感じられた。 「そんなの関係ない……絶対に、逃さないの……っ!」 それを言い切った瞬間、右頭部から一筋の白銀――少女の武器である 「……やはり、君は愚直過ぎるよ…… 漆黒はフッ、と姿を消したと思うと、素手で 「これで私に勝てる筈など無いよ……」 そして、切り札は白銀の堅固な武器をあっさりと握り 少女は痛みに怯み、瞬いた。 ほんの、一瞬だった筈。 なのに、切り札はもう正面におらず、次に目に入った映像には、左目の端に映っていた。 「そして……君は左側に隙が出来やすい……!」 もう一度瞬いたとき、草の碧が右側に広がり、陽の朱と夜の群青と、鮮血の深緑が左手にあった。 狼の眼前を、海蛇は舞い飛んで。 そのまま、地に墜ちた。 海蛇はあっさりと、 |
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