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―12月31日、23時45分―

今年も残り15分。街は去りゆく年に別れを告げる為、来たるべき新しき年を迎えるため、活気に溢れていた…



…その街の少しはずれの住宅地。大半の人が出払い、静まった家々。

その中の、いつも、行事があると何かと騒がしいあの家も、ひそやかに静まり返っていた。

その部屋にあったのは、12人の少女達の寝顔。

そして、それを見守る少年と。












新しき刻(とき)へ
〜2003to2004〜













その少年は少女達を見て微笑みながら、12枚の毛布を部屋へ持ってきた。

一枚一枚、それぞれに想いを乗せながら。



まず少年は、甘い栗色の髪の小さな少女に毛布をもって近づいた。





…雛子…やっぱり、こんな時間まで起きてるのは無理だったみたいだね…。

…それにしても、今年の雛子は色んなこと、挑戦してたよな…。

パンケーキ、とてもおいしく出来てたなぁ…。色んなところ汚しちゃったけどね…。

そういえば、髪結べるようになったのも今年なんだよね…。でも、やっぱりちょっとぐちゃぐちゃだったけどね…

でも、雛子の頑張る気持ち…大好きだよ…。





次に、先程の少女の隣で寝ている青銀色の少女へと少年は近づいた。





…やっぱり、亞里亞もだね…。さすがにもたないよなぁ…。

…亞里亞には、今年もいっぱい驚かされたな…。

夕食のときは正装して、っていうのが一番びっくりしたかな…。それにあのすごい豪華な料理の数々…ある意味カルチャーショックだったな…。

それに…歌のレッスンもやってたんだよね…。あのときの歌声、今でも覚えてる…。

年が明けてちょっとしたら、また発表会があるんだよね。ちゃんと応援してあげるから、頑張ってね…。





毛布をかけると、次に、その二人を包むようにして眠っていた少女の元に近寄った。





…咲耶も、なんだかんだ言って、お姉さんなんだね…。二人を大事そうに抱えて…。

…ことしも、咲耶には引っ張られっぱなしだったなぁ…。

プールへ一緒に行ったときも、思わず見惚れちゃったし…

あのときの一日デート、なんか恋人と歩いてる気分だった…。兄妹なのにね…僕が変なのかな…?

…それにしても、咲耶は一番上っていうこともあるから、色々苦労かけちゃったけど…ごめんね…?





そして次に、三人の程近くで力尽き倒れたように、虫眼鏡を持ったまま眠る少女へ近づいた。





…意外だったなぁ…まさか、四葉が最初に眠っちゃうなんて…。

四葉は、今年もいろんなことをしでかしてくれたよね…。

いつの間にか僕のことをチェキしてて…四葉ってば噴水に落ちちゃったっけ…。

それに、いつの間にか僕の部屋に入ってて…けど、爆睡してたり…。

けど、そんな無邪気な四葉が、僕は好きだよ…。





続いて、その横のソファーに座って、何かグラフの描かれた本を広げたまま眠っている少女へと毛布をかけた。





…鈴凛ってば、また徹夜で発明してたのかな…?

鈴凛はいつもそうだよね…クマポンを造ってたときも、思いきりのめり込んで…何日か徹夜して…いつの間にか寝ちゃって…。

けど、いつも驚くようなものを造ってくれる。

メカ鈴凛といい、クマポンといい、驚くような出来で誰にも真似できないと思う。

今度は、何を造っているんだろう…。それは、また僕をびっくりさせるのかな…?





次に、その少女の隣でぐっすりと眠る少年のような少女に近づく。





…衛はいつも早寝早起きだから、今日だけ遅くまで起きてるのは無理だったか…。

早起き、と言えば…今年は一緒にラジオ体操をやったよね…。

最初は起きるのが辛かったけど、これのおかげでこのところ早起きできるようになったし…。これは、衛のおかげかな…

蜂に刺されたときも、衛のおかげで大事に至らなくてすんだんだ…。なんだか、衛にたくさん感謝することがあったなぁ…。

お礼と言うには足らないかもしれないけど、いつでもスポーツの相手、してあげるからね…。





そして、その少女に寄りかかるようにして眠る、ヘアバンドをした少女へと近寄る。





…花穂ってば、最後にこんなことしちゃうなんて……もって来てくれたシャンメリー、本当はワインだよ…。

今年も、ずっとそんな調子だったよね…

やっぱり、よく転んでたし…坂道でオレンジ落としちゃったり…チアでも失敗が多かった…

けど、花穂はなんでも精一杯だったね。人や花への思いやりなんて、きっと日本一…いや、世界一だって言えるくらい。

…そんな花穂を見捨てるわけないから、毎日を元気に過ごしてね…。





次に、その近くにあるテーブルの上に顔を伏せて眠る和装の少女の様子を見る





…春歌…ワインにやられちゃったんだな…顔が赤いや…。

春歌は本当、色んなことを習っている。弓道に長刀、お花に舞踊、お茶、和裁に合気道、習字……あ、習字は今年から習い始めたんだよね。

…僕が様子を見せてもらったものだけでも、数えてゆくとキリがないほどだ。もしかしたら、僕の知らない習い事もあるかもしれない。

毎日毎日頑張ってるけど、休みたい日もあると思うんだ…。

疲れたり、辛くなったりしたらいつでも来ていいから、無理だけはしないでね…。





さらにその奥で、飼い犬を膝に乗せ、椅子に揺られながら眠る黒髪の少女に近づく。





…鞠絵、ちょっとうるさくなかったかな…?みんなはしゃいでたけど…。

鞠絵は今年、みんなと遊べる機会が少なかったな、と思う…。

確かに入院してる身だけれども、やっぱりこうみんな揃って遊ぶときは、13人みんな一緒の方が楽しいと思うんだ。

鞠絵も、いつか退院できる日を待っている。それはみんなだってそうだと思うし、僕だってそうだ。

来年には退院できるように、祈って待ってるからね…。





少女の膝に乗っているミカエルの頭を撫でると、その前方で机に肘を突きながら眠る赤紫の髪の少女に毛布をかける。





…千影って…ワインに弱かったのかな…?いつもなら起きているだろうに…。

千影には、今年ホントに驚かされた……って、別に今年に限ったことでもないけれどね…。

まぁ…つまり、ずっと驚かされっぱなしなんだ…。ちょっと情けないね…。

今こうやって寝顔を見ている、というのは中々ない状態で……だからだろうか……ちょっと、ドキドキしている。

…ちょっと情けない兄でごめんね?鈍い所も、直さなきゃね…。





続いてその足元、料理の載せていたトレーを両手で持ったまま机の脚に寄りかかって眠る少女の元へと目を向ける





…白雪ってば、料理やテーブル片付けが終わってホッとしちゃったのかな…?

白雪には今年も感謝している。毎日毎日特製のお弁当を僕の所まで届けに来てくれているのからね。

白雪の料理の腕は段々上がってきていて、独創性にも磨きがかかってきて、毎日のお昼がとても楽しみなんだ。

毎日のことだから、本来なら段々感謝が薄れてくるんだけれど、休みの日なんかに自炊をするといつも思うんだ。白雪は毎日これを頑張ってるんだな、って。

大変だと思ったら、何か助けになってあげるからね。いつもの感謝を込めて…。





布団をかけた後、少女の持っていたトレーを片付け、最後の少女の元へ向かう。





…ごめんね、可憐。一番最後になっちゃって…。

今年もまた、可憐とは色々あったなぁ…。

夏の急に夕立が降った日、あのときは、可憐に何があったんだ、って本気で心配したんだ…。可憐は無事だったけど、あそこまでハラハラした出来事は無かったよ…。

…そういえば、可憐もピアノの発表会が近いんだったよね…。あ、亞里亞の発表会の次の日だ…。

想いを込めて弾けば、とちっちゃっても大丈夫だから……僕だってついてるし…ね?





少年は、12人の妹達に想いを込めた毛布をかけて、部屋の中心で一息ついた。

その目に飛び込んだ時計の針は、今年が残り1分だ、ということを告げていた。





今年も…色々あったよね…。よく思い返して言っていれば、きっと同じ分……1年、時が過ぎてしまうと思う。

今年中、本当にありがとう…来年もまた、色々あると思うし、僕もまた、色々迷惑をかけるかもしれない。

ただ、これだけは言える。僕は来年も、12人の妹達に囲まれて生活していける、っていうことがたまらなく幸せだ、っていうこと。





時計の針が、残り12秒を示す。





可憐



11秒



花穂



10秒







9秒



咲耶



8秒



雛子



7秒



鞠絵



6秒



白雪



5秒



鈴凛



4秒



千影



3秒



春歌



2秒



四葉



1秒



亞里亞







0秒



…明けましておめでとう………今年も、よろしくお願いします…。





少年はゆっくりと、優しく、少女達への言葉を紡いだ…




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あとがき

改めて、明けましておめでとうございますm(_ _)m
皆さま、どう年を越されました?
のあらはまだ年を越してない為わかりません(最悪
だってまだ12月にじゅうきゅっ………………(死

……げほごほ。年明け早々すみません…。
いや、むしろ年明け早々からこんなSS読ませるほうがいけないか(沈
各妹に5行ほど今年…ってか、去年の思い出を語らせてもらってますが、これが大変なんだ(沈没
四葉や亞里亞は比較的さらさらっと書けたのですが……苦戦したのが千影と可憐。可憐なんて奇声を上げるほどに苦戦。うきゃきゃきゃきゃっ。(by山田奈緒子@トリック
…と、まぁ…そんな感じです(どんな
ところで…やっぱわざわざ秒数経過を入れたのはうざかったかなぁ…と、ちょっと悩。こちら、想像するときはアナログ型時計を頭に浮かべてくだたい………あぁ…絵が描ければ……(撃沈
…そんなこんなでございますが、指摘等ございましたらぢゃんぢゃんツッコんでやってくださいな…あ、兄のセリフに「…」が多い、と言う指摘はナシの方向で。(ナンデヤネン

以上、六寺のあらデシタ〜






閉じて戻ってクダサイ


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