眼の前に見えるのは、どこまでも青い空とぽっかりと浮かぶ白い雲。 「何で……何でこんなことになっちゃったんだろう…?」 そもそもの始まりは……。 |
「雛子、誕生日おめでとう!」 「わぁ〜いっ♪おにいたま、アリガトー♪」 そう、今日は雛子の誕生日。兄として妹の誕生日を祝わないわけが無く、僕もそれ相応のプレゼントをちゃんと考えていた。 「それじゃ、雛子にプレゼントをあげるね。」 「わあ…おにいたま、なにをくれるの??」 「それはね……。」 思えば、コレがこの事態を引き起こしたのだ。 「今日、一日中……」 コレさえ言わなければ、こんなことにはならなかったのに……。 「僕が雛子に、なんでもしてあげるよ。」 もっと別なものを考えていれば…。 「ホント、おにいたま?」 「ホントだよ、雛子が何かお願いしてくれれば、僕は何でもするよ。」 「うわぁー!おにいたま、ありがとー!」 雛子は最初はポカンとしてたけど、僕がちゃんと言ってあげると、途端に大喜びした。 思ったよりも喜んでいて、僕も少し嬉しくなった。 …のだけれども。 「それじゃあ、おにいたま?」 「早速お願い?何だい?」 「…あのね、ヒナとね、ずーっと一緒にいてくださいっ♥」 「あぁ、いいよ。」 思えば、コレもかなり無理がある話だったのだが…僕はあっさりOKしていた。多分、僕が返事をすると雛子はかなり喜んでいたし、僕自身もそれに喜びを感じていたからかもしれないけど。 すると雛子は、すぐに次のお願いをしてきた。 「ヒナね、おにいたまといっしょにお店にいきたいの!」 雛子の要望どおり、僕と雛子はすぐに商店街へと足を向けた。 悲劇は…ここから始まった。 「わ〜っ!すっごーいっ!」 雛子はある店で足を止めた。 「お人形さんだぁ〜…すっごくかわいい〜☆」 雛子は、ドールショップのショーウィンドウに飾られた爽やかな高原の少女を模した人形に、もう夢中になっていた。 目をキラキラと輝かせたままの雛子は一向に動く様子もない。 「雛子、このお人形欲しいの?」 このままじゃ埒があかないと判断した僕は、雛子にそう話しかけた。 「うんっ!このお人形さん、ヒナにくーださいっ♪」 すると、無邪気な笑みを浮かべて、雛子は僕に返事をくれた。 その笑みは、多くのものを魅了するような満面の笑み…。 が、問題はここで起きた。 この人形を買ってあげたが為に、僕の所持金は一気に1/4に激減してしまったのだ。事前に予測して貯金を下ろしておいたにも拘らず、である。 僕は少ししょげながら、雛子に人形を渡した。 「おにいたまっ!ありがとー♪♪」 だが、雛子の笑顔を見ると、この思いはすぐに吹き飛んでしまった。『兄、冥利に尽きる』とは、このことだろうかと、錯覚するほどに。 だが、これはお金が残っていた分、いい方であったのだろう。これからが、もっと大変だった…。 「おにいたまっ!ピヨちゃんがいっぱいいるのー☆」 と言って雛子が足を止めたのは、ゲームセンターより少し表にはみ出したUFOキャッチャーの前だった。 「ねぇねぇ、おにいたま、あのピヨちゃん、ヒナにくーださいっ♪」 実は僕は、UFOキャッチャーが大の苦手だった。以前、でかけた手土産にとでも思ってやったら、2500円(つまり30回)かけても1つも取れなかったことがある…。 僕が答えに窮していると、雛子が言った。 「…おにいたま……ダメ?」 雛子は悲しげな顔をしていた。ほおっておくと、すぐに泣いてしまいそうな……。 「よしっ、僕が取ってあげるから、雛子は少し待っててね!」 僕は、その顔を見て1.5秒で判断した。 数分後……。 僕は、後悔していた。 もうかれこれ47回チャレンジした。ここまで来るとコツがなんとなくわかったり―ひっくり返ったピヨちゃんが狙い目らしいとか―するのだが、どうしても落ちない。 これでラストだ。まだ1000円残っていたが、これ以上使ったら、もしもの事態に備えられないから…。 意識を集中して、@のボタンを押した。 まずは横。これは段々あわせられるようになってきた。 問題は、A……縦だ。横はまだ動きがわかりやすいが、縦は遠近がどうにもわかりにくい。 @ボタンから手を離すと、すかさずAを押した。 アームが、こちらに向かって動いてくる…。 後ろでは、何度も挑戦しているUFOキャッチャーに興味津々な様子で見入っている雛子がいる。 ここで、外すわけにはいかない…。 アームが徐々に僕の狙いのポイントまで動く…。 今だ――僕はスッとAボタンから手を離した。 ガションと音を立て降りてゆくアームは、じわりじわりとピヨちゃんに近づいていった。 そして、次の瞬間。ギチッ、と音がした。 つづく。 |
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