ある日の夜…兄の寝室にて… 彼は宿題を片付けている真っ最中だった。 |
「ふわぁぁ…。なんだか最近、夜更かしばっかりだなぁ…。不眠症にでもなりつつあるのかなぁ?」 そう言って右肩を回すと、再度宿題に取り掛かった。 「……フフフ…やぁ…兄くん…。」 すると、いきなり耳に飛び込む少女の声があった。 「!千、千影!?どこから入ってきたの?!」 彼は驚いた…と同時に、彼はその少女の正体に気が付いていた。 「フフ…兄くん、世の中…知らない方がいいことも…あるんだよ…。」 しかし、少女―千影―はそれをさも当然のように話を進めた。 「そ…そういうものなの?」 突飛な千影の発言には慣れているとは言え、やはり疑問に思う…まぁ、解決されることはないと思うが…。 「…そう言えば…兄くんは…寝不足らしいね…。…この薬を…試してみるかい?」 一体どこでそんなことを知ったんだ、という兄の疑問を聞き流しながら、千影は紫色の液体の入った小瓶を取り出した。 「…?何だい?この…見るからに妖しい液体は…?」 彼は小瓶を千影から受け取り、懐疑的に聞いた。 「…これを飲めば…すぐに眠ることが出来るよ……永久にね…」 そういって、千影は微笑んだ…いつもより、より妖しく…。 …その時の兄宅前… 「クフフぅ…今日は、夜の兄チャマのお部屋をチェキするデス☆」 そう呟くのは、彼のもう1人の妹―四葉―。 「バレないように…こっそり進入デス…」 そういうと、音を立てぬように兄の家に侵入しようとした……正面玄関から…。 すると、そのすぐ脇にいた小さな陰が動いた…。 「四葉ちゃん…?何してるの…?」 「チェ、チェキィィィィッッ!?」 その小さく、しかしはっきりとした声に、四葉は絶叫して後ずさった。 「だ、ダメデス〜っ!よ、四葉を食べたっておいしくないデス〜〜っっ!!」 そう言って、謎の物体の接近を拒む…だが、次の一瞬、四葉は大きく力が抜けることとなる。 「…四葉ちゃん…?亞里亞、四葉ちゃんは食べないの…」 なぜならその声は、同じくあの彼の妹―亞里亞―のものだったからである。 「…チェキ?…亞里亞ちゃんだったデスか…」 『ふぅ〜…焦ったデス…』などと、内心思いながら亞里亞に近寄った。 「ところで…なんで亞里亞ちゃんはここにいるのデスか?」 「…亞里亞…なかなかおやすみできなくて……兄やに…『いっしょにおやすみしてください…兄やとならゆっくりおやすみできるの…』って…お願いしに来たの…」 亞里亞は四葉の問いにいつもどおり、ゆっくりと答えた。 「そうだったんデスか…四葉は、兄チャマをチェキしようと思ってたんデス☆」 そう言うと、四葉は兄の家のドアに近づき、「とりあえず、中に入りマショウ♪」と言って兄の家に入っていった。 亞里亞は四葉に誘われるままに、兄の家に入っていった。 …兄の部屋… [こんこん、ガチャ] 「兄チャマ!今日は兄チャ…」 行儀よくドアをノックして、元気よく部屋に入っていった四葉と、それについていった亞里亞を待っていたのは、先にいた千影だった。 「…レレ?千影ちゃん?千影ちゃんも兄チャマに用事が?」 「やぁ…四葉ちゃんに亞里亞ちゃん…兄くんに用事かい…?」 四葉と亞里亞を見つけると微笑みながら聞いた。 「そうデス!兄チャマをこっそりチェキしようと……!!」 その兄を、四葉と亞里亞が見つけるのにはそう時間はかからなかった…。 「兄チャマが倒れてるデス!千影ちゃん、どうしたんデスか!?」 「兄やが……くすん…」 倒れている兄を見て、千影に問いかける四葉と、兄に駆け寄る亞里亞。 それを千影は、表情を崩さぬまま答えた。 「…フフフ…兄くんが…寝不足だと言うから…少し…眠らせてあげたんだよ…」 「……………」 しかし、兄からは呼吸している様子は見受けられなかった。まるで、息絶えたように。 「で…でも、息してるように見えないデス…!本当に眠らせただけデスか!?」 四葉は少し口調を荒げて千影に言った。片や亞里亞は、兄に触れて、ある事に気づく。 「…兄や…何だか冷たいの…だいじょうぶなの…?」 それを聞き、千影は兄の元にかがんだ。 「…ちょっと…量が…多かったかな…?」 そう言い、兄の顔に手を添える。流石に心配そうな様子である 「…おそらく…大丈夫だよ…」 「…………」 その千影の言葉とは裏腹に、兄の顔はどんどん青ざめていく。 「…!兄チャマの顔が…どんどん青くなってるデス…!」 「兄や…起きてなの…」 二人は必死に兄に声をかけた。しかし、兄は依然深い眠りの中から目覚めなかった。 すると、千影が口を開いた。 「……あと…数時間で…目覚めるはずだ…もし…目覚めなかったら…コレを少しだけ…飲ませるといい…」 そう言うと、千影はポケットから3つの小瓶を取り出した。中身はすべて同じようだ。 「…これ…何デスか?何かとっても透き通ってるデス…。」 四葉は千影の取り出した3つの小瓶のうち1つを手にとって眺めた。すると、亞里亞が突飛なことを聞いた。 「これ…甘いの…?」 …いかにも亞里亞らしい質問である。 「…ああ…とても…甘いよ…飲んだ者が…おかしく…なるくらいね…」 千影がそう言うや否や、亞里亞は千影が持っていた小瓶を二つとも取っていた。 「わぁ…亞里亞、甘いのだ〜い好きなの♪……いただきます♪」 [ごくごく] 亞里亞はそういうと、1つを飲み干してしまった 「ああ!四葉も飲むデス〜!」 手に取っていた液体を飲み干す四葉。 「…あ…その薬は…15才以下が…飲むと強力な…アルコールと同じ…効果が………」 少し焦りながら言うが、もうすでに手遅れであった…。 「…ひっく…ちーちゃん?なにか言いマシタかぁ?…ひっく…」 「…ふふふ……」 二人はすっかり酔いが回っていた… 「…遅かったか…」 はぁ、と溜息をつく千影であった。これは面倒なことになってしまった、と。 「うふふ〜☆兄やものむの〜☆」 すると、そう言って亞里亞は、兄の口に無理矢理小瓶を押し込んだ。 「あははははっ!!!あーちゃんナイスデス〜!!」 その行為を四葉は止めようとはせず、むしろ、楽しんでいた。 「…あ…いけない…それほど飲ませてしまったら…兄くんまで…」 千影の言葉は空しく空を切った。 「…うぐっ…」 [ごくごく…] そして、兄は1瓶、丸々飲み干してしまった…。 「………」 飲み干すや否や、ゆっくり、よろめき立ち上がった。 「兄や〜?おいしいですか〜??」 「………」 亞里亞の暢気な問い。兄は答えることはなかった。 「あははっ!兄チャマが立った!兄チャマが立った〜!!」 「………」 兄は四葉の陽気な笑いにも反応することなく、うつむいたままだった。 「…兄くん…?」 唯一平静を保っている千影が言葉をかけた。心配そうに。 すると、唐突に兄はうつむいた顔を上げて言った。 「…ふふふ…どうしたんだい?みんな顔が真っ赤だねぇ?」 紅潮した表情でニヤリと笑った。 「…兄くんが…一番赤いよ…」 冷静に突っ込みながらも、兄の変貌に表情は少し固い。 「千影は…何ともなさそうだねぇ?…赤くしてあげるよ…」 「…なっ…あ、兄くん…」 顔を寄せる兄に、思わず動きが固まった。反抗できず、唇が迫ってくる。 「兄チャマ〜?何してるんデスかぁ??四葉も仲間に入れるデス〜☆」 「亞里亞も入れてほしいの〜☆」 その兄の行為を止めるように、二人が言った。 「ふふふ…大丈夫だよ…みんな順番にしてあげるから…」 一旦、顔を離して兄は二人に言った。 『…ど、どうやら…兄くんは…酔うと色情魔に…なるようだね…。…これは…面白い結果が…得られたね…』 顔が離れて、準備も何も出来ていなかった千影は、内心ホッとした気分だった。流石の千影とは言え、このような急な出来事には慣れてはいなかった。いきなり兄が迫ってくる、と言う事態は初めてだからだ。 しかし、そのホッとした気分はすぐに吹き飛ぶこととなった。 「じゃぁ…まずは千影から…」 そう言って、再度兄は千影に顔を寄せた。 「…!…あ…兄くん…」 「…千影…」 千影に徐々に唇を近づける兄。 冷静さを失った千影に、次に起こる事態は予測しえないものだった。 「兄やぁ…亞里亞、待てないの〜」 残り数cmだったところに亞里亞が入り込んだのだ。 「しょうがないなぁ亞里亞は。」 兄は不敵に微笑んだ。 「じゃぁ、眼をつぶって…いいよって言うまで、開けちゃだめだよ?」 「は〜い♪♪」 そんな会話が続いている最中、千影は落ち着きを取り戻しながら思った。 『……驚いたね…亞里亞ちゃんが…ここまで積極的になるなんて…ね…。』 しかし、千影はもう一人の存在を忘れていた。もっと、亞里亞以上になにかしでかしそうな存在を。 […フッ…] 「…!停電…?」 その存在は、全員の想定外のことをやってくれた。 「一体な…!!?」 「兄くん!?」 近くにいたはずの兄の存在が消えるのを感じた千影は、兄を呼びかけた。だが、返答はなく、代わりにどこかで聞いたような声が聞こえてきた。 「フッフッフ…あーはっはっは!!兄チャマの身柄は、この美少女怪盗クローバーが頂いたデス!!取り返したかったら、捕まえてみるがいいデス!!」 ドアを開け、外へと立ち去る音がする。その辺りはいかにも彼女らしいところだ…。 『これは…面白く…なってきたね…。…早く…追おうか…』 そう思いながら、千影はその「美少女怪盗クローバー」の後を追おうとしたのだが… …兄の家から少し離れた公園…… 「よ、四葉?僕を連れて行って何をするんだい?順番だ、っていったのに…」 そんな問いかけに、四葉はこう答えた。 「クフフ…それは…兄チャマと二人っきりになるためデス☆」 「しょうがないな〜四葉は…でも、かわいいから許してあげる♪」 そんなことを言うと、兄は四葉の視点までゆっくりと腰をおろした。 「さぁ…眼を閉じて…」 「…わかったデス…☆」 ゆっくり目を閉じる四葉… 「…四葉…」 […ちゅっ…] ついに口づけを交わす二人。ゆっくりと、長く、二人は動かなかった。 「…これで…いいかな…?」 そう言って兄は顔を離し、四葉に聞いた。アルコールの効果だけではなく、少し違った紅い顔をして。 「…兄チャマ……ばたっ…」 少し紅くなった兄を残し、アルコールと恥ずかしさの相乗効果で、四葉は倒れた…。 「あっ!四葉!?大丈夫かい??」 倒れた四葉を起こし、呼びかける。が… 「…くー…くー…」 四葉は眠っただけであった…。 「…寝ちゃった……かわいい寝顔☆」 そんなことを言って、四葉を背負い兄は立ち上がった。四葉の想いも共に。 …話を戻して…兄の部屋… 「…兄や…まだダメ…?」 そう言うと、半ば忘れられた少女はゆっくりと目を開けた。 「…あ…真っ暗なの…四葉ちゃ〜ん?千影ちゃ〜ん?兄や〜?……真っ暗はこわいの…くすん…」 その泣き声は、四葉を追おうとした千影の耳にしっかりと届いた。 「…ん?亞里亞ちゃんが泣いている…?…しょうがない…。」 「あ…千影ちゃん…亞里亞…こわかったの…くすん…」 戻ってきた千影にすがりよる。まるで母に甘えるように。 「…亞里亞ちゃん…もう…大丈夫だよ……それに…兄くんも…すぐに帰ってくるだろう…」 そう言って、亞里亞に安心感を持たせる。やはり、母のように。 「…兄や…すぐ帰ってくるの?…けど…亞里亞、眠くなってきちゃったの…」 そう亞里亞が言うと、千影は亞里亞の頭に手を置いて、優しく言った。 「…そうかい…。ならば…おやすみ……夢の精霊たちも…待っているだろう…。」 ちょっとして…四葉を負ぶさった兄が帰ってきた。 「よっこいしょ…ただいま……って、あれ?亞里亞も寝ちゃったの?」 四葉を背中から降ろして、千影に聞く。大分酔いは醒めてきたようである。 「…兄くんが…帰ってくるのが…遅すぎたからだよ…」 少し呆れたように兄に言う。 「そっか…じゃ、いい夢が見られますように…」 兄は亞里亞に近づくと、顔を覗き込んで口づけした。 「…さて、そろそろ帰るかい?」 「…そうだね…夜も遅いし…明日には…全て忘れているだろうから…」 兄の意見に同意して、帰ろうとする千影。後に小さく呟いて。 「…?何か言ったかい?」 「…いや…なんでもないよ…」 「???…まぁ、とにかく、僕は四葉と亞里亞を送ってくからね。おやすみ、千影☆」 そう言うと、千影に近づいて頬に口付けた。 「…あ…ああ…おやすみ…兄くん……」 最後に千影の顔も、紅くなりました。 こうして、『お兄ちゃんを眠らせよう事件』は、幕を閉じた……と、おもいきや、この話には後日談があった…。 次の日の朝… 「うぅ〜…頭が痛いデス〜…あれ?夕べは何をしてたんデシたっけ…?」 「…くすんくすん……頭が痛いの…がんがんするの…くすんくすん…」 「ぐあぁ…頭が…割れそうだ……。昨日の…千影が来た辺りからの記憶が…全くないし…」 この日、3人は原因不明の頭痛と、消えた記憶のせいで、頭を抱えていました、とさ。 「フフフ…」 〜fin〜 |
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