「それならしょうがないですね……。でも、亞里亞はどう思っているんですか?」 「亞里亞さまは……その……。」 兄やとじいやが、亞里亞をじっと見つめました……。 亞里亞は……フランスに帰りたくないの。 亞里亞は、兄やに会うために日本に来たの……。日本に行けるってわかったとき……亞里亞、とってもうれしくて……一晩中、ねむれなかったくらいだったの……。 フランスにいたときから……ずぅっと兄やに会いたくて……兄やは……亞里亞の王子様なの……。 世界で一番おいしいお菓子……とってもとっても甘い“アイ”をくれる兄や…………もう、どこにも行きたくないの……兄やがいっしょじゃなきゃ……イヤなの……! 亞里亞がそう言ってから……みんな、なんにも話しませんでした……。 とっても長い時間……みんな、ゼンゼンしゃべりませんでした……。 そしたら、兄やが亞里亞に近づいてきました……。 そして……亞里亞の目線にあわせて、兄やはお話をはじめたの……。 「亞里亞……日本とフランスでね、一緒のものがふたつあるんだ。なんだかわかる?」 兄やは、亞里亞にモンダイをだしたの……。けどね、亞里亞…… 「亞里亞……わからないの、くすん……。」 「あ、ちょっと難しかったかな? 答えは、“空”と“空気”だよ。」 「お空と……空気?」 「そう。空だって、空気だって、日本からフランスまでずっとつながってるんだ。だから、亞里亞とどんなに遠く離れても、亞里亞と同じ空気を吸って、同じ空を見ることができるんだ。」 亞里亞は……ちょっとだけ、嬉しくなりました。だって、ふらんすでも、同じものがあるってわかったから……。 兄やは、もうひとつお話をはじめました……。 「それでも……確かに、日本とフランスは遠い……けどね、ひとつだけ、亞里亞の近くにいられる方法があるんだ。」 「……近くにいられる……ほうほう?」 兄やはにっこり笑って、そう言いました。「ちょっとだけ、お顔をじっと見てごらん?」 「わかったの。」 「そしたら、目を閉じてごらん?」 兄やの言ったとおりに、目を閉じてみたの……。そしたらね…… 「あ……兄やが見えるの……。」 まぶたの裏側に……兄やが見えるの……♥ 「会いたいって思えば、いつでも会えるんだよ、亞里亞……。」 「兄や……。」 やっぱり……亞里亞は兄やのことがだいすきです……♥ 「それに、言っただろう? 兄やは亞里亞がステキなレディになるまで見守らなきゃいけない、って。」 「だったら亞里亞……ずっとステキなレディにならなくていいの……兄やが見守ってくれるなら……。」 亞里亞はそういったけど、兄やはつけたして…… 「ステキなレディになったら、いっしょに住もうって、ヤクソクしようと思ったのになぁ?」 って言いました……。そしたら亞里亞、はやくステキなレディにならなきゃって思って……。 「亞里亞……フランスに行くの……はやくステキなレディになるの……♥」 そう、言いました。 |
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